採用ホームページ活用のススメ 第2回

全体整理とリニューアル

前回の振り返りと今回のお話について

前回は、当連載の初回ということで、まずは「そもそも」という話をしました。
採用ホームページについての連載ですが、そもそも採用ホームページはいるのか?や、なんのために使うのか?また、採用ホームページが効果を発揮できることなど、まずは共通認識をつくるべくご説明を致しました。
そして今回は、もう少し入り込んだ内容で、改めて採用ホームページの立ち位置を整理するとともに、採用ホームページを改善していく打ち手としての「リニューアル」について触れていきます。

採用ホームページ作成・運用という施策

前回の記事では、採用ホームページが解決できる課題についてお話をしました。

ただ改めてここでご認識頂きたいのが、採用ホームページは「課題を解決するための、数ある打ち手の中の一つ」であるということです。

採用ホームページが解決できる課題として、「応募数(厳密に言うと集客数)の増加」や、「応募意欲の増強」などを挙げましたが、「応募数を増やすためにすべきこと」や「応募意欲を増強させるためにやるべきこと」は、他にもあります。

例えば、求人広告を出し(応募数を増やす)、求人広告の内容を充実させる(応募意欲を増強)ことでも、達成できる可能性はあります。

少し回りくどくなりましたが、お伝えしたかったこととしては、本連載は「採用ホームページの活用方法(主に、リニューアルについて)」を解説するものではありますが、採用ホームページの活用やリニューアルが「最上の手段である」とは言っていないということにご留意ください。

「採用成功」に至るまでの課題は様々ありますが、主には集客の改善や伝えるべきメッセージや情報の見直しの方が解決できることは多く、リニューアルは積極的に行うというよりは「やらなければならないのでやる」というイメージです。

ただ、個人的には「採用ホームページはどの会社も当たり前につくるべき」と考えていますし、「定期的にリニューアルはせねばならない」と思っているので、「いろいろな施策に手を出す前にまず土台としてやるべきこと(でも、ちょっと専門的なことを考えないといけないから少し難しいもの)」を、解説している連載になります。

採用の全体感のなかで、ウェブやマーケティングをどう活用していくのか?という話は、以前の連載でお伝えしていますので、そちらをご覧ください。

全体感を理解した上で、「採用ホームページを改善しなければならない!」となったときに、今回のコラムが役立ちます。

 

 

なぜ様々な施策の「土台」として当たり前に持って運用すべきと考えているかというと、以下の特長があるからです。

 

自社でほぼすべてコントロール可能

求人広告では媒体社側のルール(例えば枠の文字数制限など)があり、 完全に自由な表現はできないが、自社採用ホームページであれば自由にできる。求人案件掲載の数なども、必要なだけ掲載可能。

比較的安価

採用ホームページは、作成時やリニューアル時にはある程度まとまった金額が掛かりますが、 一度作ったり、リニューアルをしてしまえば、その後は基本的にサーバー代や運用のための工数(人件費)程度しかかからないため、比較的価格を気にせず使うことができる。

広告と違い長期にわたって効果がある

広告は、「掲載している間(お金を払っている間)は効果があり、掲載を停止すると効果がなくなる」が、 採用ホームページは「掲載期間」という概念がなく、求人が必要になれば掲載し、 採用が完了したら掲載終了するという意味では、広告と比較すると長期に亘って効果があるといえる。

 

そんなメリットも多いため、ぜひ土台として当たり前に作って運用して欲しい採用ホームページですが、もう一つ「特徴」があります。

それは、「公開して終わり」ではなく、「育てていく」必要があるということです。
はい。前回の最後にお伝えした内容ですね。

では、一度作成した採用ホームページを、より効果が出るように「育てていく」ということについて説明していきます。

採用ホームページの改善方針

何を目的とするか?によって分解の仕方は変わりますが、以下は「応募数UP」を目的として、採用ホームページを改善する場合にどんな打ち手が考えられるか?をまとめたものです。

 

 

採用ホームページにおいて、応募数を向上させるためには、シンプルに分解すると
「アクセス数を増やす」か「応募率を上げる」ということになります。

ウェブ用語で言うと、「セッション数を増やす」か、「コンバージョン率を上げる」ということですね。

要するに
「応募する率は一緒でも、もっとたくさんの人に来てもらうことで、結果的に応募数を増やす」
「今と同じ人数でも、より応募してもらえるように応募率を上げることで、結果的に応募数を増やす」ということです。

もちろん、どちらかしかできない訳ではないので、通常は同時進行で両方行うことが多いですが、考え方として2つの方向性に分けられます。

 

(アクセス数を増やす)
そして、アクセス数を増やすということをもう少し細かく分解してみると、新規の人を増やすのか、リピーターを増やすのか?ということに分解されます。あくまで一般的にで、採用ホームページでは完全に当てはまるわけではないと思いますが、新規ユーザーよりもリピーターの方がコンバージョン率が高い(複数回訪れることで、より内容を理解しているため)ということが言われています。

ただ、採用ホームページの場合、リピートする方は前回来た時に応募したい案件がなかった可能性が高いため、今掲載している求人に合う方に応募してもらうためには、新規をどんどん獲得する必要もあると感じています。

 

(新規ユーザーの獲得)
新規ユーザーを獲得するためには、そもそも認知をしてもらう必要があるので、広告を出稿したり、自社の社名やブランド名が入らないところでの検索で、少しでも上位に表示されたりするようにしていくことが必要ですし、その掲載する広告や検索結果に出てくる文章が魅力的で、ついクリックしたくなるようにする必要もあります。

 

(リピーターを増やす)
リピーターを増やすということをしたいのであれば、リピートしたくなるようなコンテンツを作ることが必要でしょう。採用ホームページの場合、一定頻度で案件の入れ替えがあるため、きちんと新規掲載をしたり、採用が完了した案件を停止するなどしていれば自然と「リピートする理由」になりますが、あまり滅多に案件が出ない場合などはメルマガ登録などを促進し、案件が掲載されたタイミングで連絡するなども検討してみてください。メルマガ登録を促すことは、リピートのための導線を作ることにもつながります。

 

(応募率UP)
応募率向上の方ももう少し突き詰めて考えてみると、「そもそも応募意思はあるのに、採用ホームページが使いづらい、見づらい」のか、「興味はあるが、応募したいと思えるほどの説得材料がない」かのどちらかに分かれます。

前者であれば、「デザインの改善や導線の改善」ということが打ち手になりますし、後者であれば「応募したくなるような内容を記載したコンテンツ追加」が打ち手となります。

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このあたりのお話は、それぞれ分解する形ではありますが、以前のウェブマーケティングコラムの方で近しいお話をしております。

今回は、「採用ホームページ活用」というテーマなので、集客面というよりはコンテンツ面に絞ってお話をしていきます。
採用ホームページに限らず、ウェブサイトの更新は日常的にあります。
特に採用ホームページでは、募集開始、募集停止に伴う案件の上げ下げ、時給や勤務時間など条件の細かい変更、退職者が写っているため写真変更などなど、通常のホームページよりも頻度が高い傾向があります。

そういった細かい変更については、適宜発生ごとに行うとして、上記のように課題を分解して戦略的な改善をする場合は、「どのような文言・内容であれば求職者は応募したくなるのか?」「どのような写真であれば求職者は応募したくなるのか」「このページを見た後は、どのページを見たくなるだろうか?そのページにはたどり着きやすいか?」などを考えて変更を実施します。

中でも、
定期的に行わなければならないが
非常に大掛かりなため、色々と考えながら進めなければならない
「リニューアル」について、さらに深くお話をしていきます。

そもそもリニューアルとは?

リニューアルというのは、日本語にすると「刷新」ということになるかと思いますが、基本的には「改めてもう一度作り直すくらいの、大掛かりな変更」だと思ってください。

先程の、「文言変更」や「写真変更」「ページの追加」程度では、通常「リニューアル」とは言いません。

ウェブサイトのコンセプト、テーマ、伝えたいメインメッセージ、ウェブサイトを支える技術、ユーザー側のデバイス等ウェブサイトの見方の変化などが起こったときに、改めてそのタイミングでのベストなウェブサイトを作る作業が「リニューアル」です。

先程、リニューアルは「定期的に行わなければならない」とお伝えしましたが、どのような場合に「リニューアルすべき」となるのでしょうか。

代表的なものを挙げると、

自社の情報が大きく変更になった

✅コーポレートカラーなど、自社の情報が大きく変わった
✅採用ターゲットや注力している職種などが大きく変わった
例)学生アルバイト中心だったが充足してきたため、社員採用をメインに変えた

デザインが古くなってきた

✅スマホでの見やすさ、操作性
スマホがどんどん大画面化。折りたたみなども出始めている中、見やすい状態を保てているか?

✅PC画面の横幅
画面解像度が向上し横幅を広く使えるようになっているが、昔ながらの真ん中だけ使うようなデザインになっていないか?

✅ボタン等のデザイン、画像の解像度
圧縮技術の向上、ネット速度向上などにより、より高解像度の画像も使えるようになったが、解像度の低い画像を使い続けていないか?

機能が古くなってきた

✅比較的素人でも使いやすいウェブサイト管理システムを使えているか
原稿の投稿や写真の変更など、ブログ感覚でできるシステムが当たり前になっているが、情シスなどでないと触れないような仕組みになっていないか?

ユーザーの使い勝手(ユーザビリティ)が悪くなった

✅デバイスの変化や、ウェブサイトの使い方のトレンドが変わるなど「案件を探して応募する」「希望職種について詳しく確認したから、近隣店舗で応募」などの、求職者が当たり前に行う行動がやりづらくなっていないか?

 

概ね、このような理由の場合は「リニューアルすべき」となり、そこまでではない改善が必要な内容の場合は、「文言変更、写真変更、ページ追加」などで対応していくイメージでしょうか。

いずれにせよ、上記のような状況は数年に一回程度は訪れるかと思いますので、早ければ3〜4年、遅くとも10年に一回程度はリニューアルが必要だと考えられます。

リニューアルをするときに決めること

リニューアルは、先程ご説明したように基本的にはもう一度サイトを作り直すくらいの大掛かりなものですので、目的などしっかりと考える必要があります。

以下のワークシートも活用し、関係者間(プロジェクトメンバー、上司、ホームページ制作会社)での共通認識を作り、全員が「納得感」を持った状態で進めましょう。

 

※ワークシートのサンプル(記入例)

執筆者プロフィール

株式会社Task it 代表取締役(2016年より現職)
株式会社リクルートジョブズにて人材の営業、新規事業立ち上げ部署などで従事後、ウェブの可能性を感じ独立。ウェブ業界未経験の状態だったものの、ウェブ解析士取得から約1年半でウェブ解析士マスターまで取得。
現在は、個人・企業に対してウェブ解析士講座やGoogle アナリティクス講座の実施や、ウェブコンサルティングを行っている。
著書に「Googleデータポータルによるレポート作成の教科書」や「1週間でGoogle アナリティクス4の基礎が学べる本」がある。(ともに共著)