【第2回】人事のためのウェブマーケティング講座

ウェブ解析士マスターのコラム
<第2回>求職者の行動を考えよう。どうやって探して、何を検討する?

前回の振り返りと今回のお話について

前回は、「採用ウェブマーケティング」についての全体像をお伝え致しました。
今回は、その中でも まずいちばん初めに考えて頂きたい「ユーザー」についてのお話をしようと思います。(採用的なワードで言うと「ターゲット」や「求職者」のことですね。)

ウェブマーケティングにおいて とても大事なことは「ユーザー」を理解することです。

 

 

「ユーザーはどのように自社について知るのか?」
「その時 検索するキーワードは?」
「SNSは何を良く見ている?」
「他にどんな企業を検討している?」
「働く場所を決める条件の優先順位は?」などなど、

ユーザーについての深い理解なくして、正しいマーケティング施策を実施することはできません。

ただ、皆さんも人事のプロ、上記のようなことは既にしっかりと考えて採用活動をしていることかと思いますので、よりマーケティング的なエッセンスの強いお話をしていきたいと思います。今回お話するのは、「行動モデル」についてです。

 

行動モデルとは?

行動モデルとは、消費者の購買までの行動・心理プロセスを説明する考え方のことです。
「行動モデル」や「ユーザー行動モデル」と言われても、なかなかピンと来ない方も多いかと思いますが、「AIDMA(アイドマ)」なら、聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?

AIDMAは、1920年代にアメリカで唱えられ始めたユーザーの行動モデルで、ユーザーが商品を知ってから買うまでの心理や行動の変化のステップをまとめたものです。

 

 

―AIDMA-

 

Attention(注意)…商品について知る、認識をする

Interest(興味)…商品について興味を持つ

Desire(欲求)…商品を欲しいと思う

Memory(記憶)…その商品について記憶をする

Action(行動)…商品を実際に購入する

 

実際にテレビCMを見て何かものを買ったりする際の自分の行動や心の動きを考えてみると、当てはまるものがあるのではないでしょうか?

諸説があり、1920年代とかなり昔に考えられたモデルではありますが、現在でもマスマーケティングにおいては当てはまると言われています。

また、インターネット、特にSNSが発達した現代においては、AIDMAとは違った行動モデルも提唱されています。

最近提唱されている行動モデル

現在のインターネットやSNSを前提とした行動モデルとしては、「AISAS(アイサス)」「AISCEAS(アイシーズ)」「ULSSAS(ウルサス)」、「RsEsPs(レップス)」や「DECAX(デキャックス)」モデルなどがあります。

これらの特長としては、インターネットやSNS、そしてコンテンツマーケティング(※1)が、前提となっています。
本当は、今の時代で考えるのであれば、こういった新しい行動モデルでも考えて行きたいところではありますが、
まずは、ベーシックを知りましょう!ということで、

この記事では、AIDMAをベースに(少しカスタマイズして)ユーザーの行動を考えてみましょう。

※1:コンテンツマーケティングとは
自社のビジネスに関係のある記事を、ブログや自社作成の専門サイトに掲載をすることで、自社名や自社商品名を知らない人にもサイトにアクセスしてもらうマーケティング手法のこと。
<例>「リクオプ」を売りたい場合に、「リクオプ」に関する記事だけでなく、「自社求人サイトの作り方」や「大量の応募を漏れなく対応する方法」などの記事を書いて、集客するなど。

AIDMAをベースに、自社の採用を考えてみましょう

では、AIDMAをベースとして、自社のターゲットユーザー(求職者)の動きと、それぞれのフェーズで、しっかりとこちらからアプローチができているか?を考えてみましょう。以下、簡単なシートを作成しましたので、ぜひ記入しながら読み進めてみてください。

 

 

Attention(注意)…商品について知る、認識をする

まず、ここでは「そもそもどうやって自社の求人を、ユーザー(求職者)は知るのか?」を考えてみてください。

ユーザー(求職者)は、普段どんな生活をしているでしょうか?テレビは見る?雑誌は読む?ネットではどんなサイトを見ている?検索をするとしたら、どんな検索ワード?

また、オンライン上の行動だけでなく、オフラインでの行動も考えてみましょう。
例えば、店舗をお持ちの企業であれば、ユーザー(求職者)は、お店に来店する人ですか?来店してからはどんな導線ですか?導線上に採用の貼り紙は目に入りますか?などなど…。なるべくユーザー(求職者)の気持ちになりきって、自社の求人情報をどうやったら認識してもらえるか?を考えてみましょう。

注意)ユーザーの気持ちになりきるために、求人と直接関係ないことまで考えてみる方がオススメですが、考えづらければ、求人に関することだけでも良いです。

 

Interest(興味)…商品について興味を持つ

次に、興味です。ユーザーは日々大量の情報に触れています。求人サイトを見れば多くの求人情報が掲載されています。

あなたの会社の求人情報を見つけてくれたとしても、読み飛ばしてしまう可能性が非常に高いです。(「認識をすればちゃんと読む」、ではないことに注意してください。)

では、どんなことが書かれていれば、ユーザー(求職者)は、興味を持ってあなたの会社の求人原稿を読み進めてくれるでしょうか?

ここもユーザー(求職者)になり切ってみて考えましょう。
給与が高ければ? 休みが多ければ? 仕事内容が充実していれば? 楽しそうな写真が載っていれば? 時間に融通が聞けば? 自分と同じ属性の人が(例えば主婦や学生など)たくさん働いていれば? などなど…さまざまなケースを想定して考えてみましょう。

注意)あくまで「ユーザー(求職者)目線」にこだわってください。「自社の強み・セールスポイント」が、必ずしもユーザーが興味を持つこと、とは限りません。

 

Desire(欲求)…商品を欲しいと思う

続いて 欲求です。ここは、通常の商品であれば、期間限定セールとか、クーポンや値引きなどが当てはまり分かりやすいのですが、求人だとなかなか考えづらいかもしれません。
ここでは、興味を持った内容について、さらにどんな情報が載っていれば応募したいと思うか?を考えてみましょう。

たとえば、先程のInterest(興味)で例として出した「仕事内容が充実している」ということで興味を引けたとして、どんな内容が書いてあれば、「確かに仕事内容が充実している!応募したい!」となるか?を考えてみましょう。

個人的に、ここは伸びしろが大きいところだと思っております。(逆に言うと、できていない会社が多い)
求人媒体などでは、掲載可能な領域が限られており、どうしてもすべての魅力を伝えきることは難しいと思っています。
しかしながら、自社採用ホームページの求人原稿を1ページ追加することは、そこまで難しくないはずです。

ユーザー(求職者)は、本当に興味関心があれば検索をして、その会社のホームページやSNS、求人情報ページなどをしっかりと見ることでしょう。店舗がある企業への応募なら、実際にお店に足を運んで見るかもしれません。
そんな時に、どんな情報があれば「応募したい!」とまで気持ちを高めることができるでしょうか?
ぜひ、考えてみてください。

 

Memory(記憶)…その商品について記憶をする

記憶については、オンラインの求人サイトなどではそこまで必要ないかもしれません。(応募したい!と思った瞬間に、応募できるので。)しかしながら、検討期間が長い方もいるでしょうから、考えるとすると、

・一度応募があった方に対して、メールや電話で定期的に連絡をしてみる。
・求人について新着があった際に、ご連絡をする(もちろん、事前に許諾が必要ですが)

などが考えられます。
ただし、次の「行動」で説明をしますが、基本的には「即応募してもらう」方向で考えるべきだと思います。

 

Action(行動)…商品を実際に購入する

ここでは、ウェブサイトでの応募機能や電話応募の受付体制、そして面接のセッティング状況について考えてみましょう。

まず、基本としては「応募したい!」と思った時にすぐに応募できるかどうか?です。
応募するボタンもしくは応募電話番号は、すぐに目につく場所、目につく色、目につく大きさで表示されていますでしょうか?

ユーザー(求職者)も暇ではありません。忙しい日常生活の中、わずかなスキマ時間で求人を探し、応募しています。
せっかく見つけてもらって、興味を持ってもらっても、応募方法が見つからない、すぐに応募できないということになって、一度スマホを閉じてしまったら、二度と見つけてもらえないかもしれません。

また、応募がすぐできるようになっていたとしても、面接はどうでしょうか?
面接の連絡がなかなか来ない、すぐに働きたいのに、面接が1週間後からしかない、面接をしたのに全然合否の連絡がない…などなど。
やはりここもユーザー(求職者)ががっかりして諦めてしまうポイントです。

 


以上、AIDMAになぞらえてお話しましたが、それぞれ、

「ユーザー(求職者)の思考・行動」
「自社のアプローチ状況」について、「出来ていること」「これからやりたいこと」
に分けて、記入してみましょう。

こちらから 、記入するためのシートとサンプルをダウンロードして、ぜひ書き込んで見てください。

 

カスタマージャーニーマップにまとめる

こういった、行動モデルをもとにユーザー(応募者・求職者)の動きを理解し、それを社内で共有するときに最適なのが「カスタマージャーニーマップ」です。


(2022年上級ウェブ解析士認定講座資料より)

 

 

今回、皆さんにワークとして作成頂いたものは、この「カスタマージャーニーマップ」の簡易版です。
まずは今回の記事でお配りしたものくらいから始めて頂き、「マーケティングって、面白そうだな!」と思われたら、ぜひ少し「カスタマージャーニーマップ」についても勉強し、作成をしてみてください。

 

「カスタマージャーニーマップ」は、カスタマー(ユーザー・応募者)が、募集案件を知ってから応募をするまでに接触する媒体や、その時の感情などをまとめたものです。

実際には、ユーザーの感情は上がったり下がったり、楽しくなったり不安になったりします。

ぜひ一度、今回のワークシートやカスタマージャーニーマップを作成してみて、自社のターゲットユーザーの行動を考えて、情報を掲載している媒体や掲載している情報自体、応募・面接対応などに抜け漏れや改善ポイントがないか?を洗い出してみましょう。

 

次回は、「USP(ユニークセリングプロポジション)」についてお話します。
ぜひお楽しみに!

執筆者プロフィール

株式会社Task it 代表取締役(2016年より現職)
株式会社リクルートジョブズにて人材の営業、新規事業立ち上げ部署などで従事後、ウェブの可能性を感じ独立。ウェブ業界未経験の状態だったものの、ウェブ解析士取得から約1年半でウェブ解析士マスターまで取得。
現在は、個人・企業に対してウェブ解析士講座やGoogle アナリティクス講座の実施や、ウェブコンサルティングを行っている。
著書に「Googleデータポータルによるレポート作成の教科書」や「1週間でGoogle アナリティクス4の基礎が学べる本」がある。(ともに共著)

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