更新日:2024年8月28日
記事提供:株式会社フロッグ様
最近、スーパーやコンビニなどの小売業を中心に「座りながらの接客」を推進する動きが出てきています。
日本の小売業界・サービス業界においては 立って接客やレジ打ちをすることが慣例となっていますが、海外ではレジに椅子が設置されている国も少なくありません。
日本でも椅子の設置によって身体の負担を和らげ、よりスタッフにとって働きやすい環境を作るための取り組みが始まっています。
2024年5月、学生・若者のための労働組合「首都圏青年ユニオン」が「# 座ってちゃダメですかプロジェクト」を立ち上げました。
「労働安全衛生規則」615条では
「事業者は、持続的立業に従事する労働者が就業中しばしばすわることのできる機会のあるときは、当該労働者が利用することのできるいすを備えなければならない」
と規定されています。
同プロジェクトはこれを取り上げ、具体的な事例や職種範囲の明示などを求める請願書を厚生労働省に提出しました。
要請に至った背景には、
●長時間の立ち仕事によって足腰を痛める人が絶えないこと
●それを運営会社側に訴えてもなかなか交渉が進まないこと
などがあるといいます。
そもそも、接客業ではなぜ椅子に座ってはいけない風潮があるのでしょうか?
株式会社マイナビの調査によると、接客業を営む店舗のうち44.3%が「接客中、椅子に座ることを許可していない」または「特にルールを決めていないが、座っていない」と回答しています。
引用元:株式会社マイナビ/『マイナビバイト』による新プロジェクト「座ってイイッスPROJECT」始動! アルバイト専用イスを開発し、実店舗で試験導入。プロジェクト動画も公開/2024年8月14日時点
また、座っての接客を許可していない理由としては「お客さんからの印象の悪化を防ぐため」が33.8%、「なんとなく・特に理由はない」が25.6%を占める結果となりました。
引用元:株式会社マイナビ/『マイナビバイト』による新プロジェクト「座ってイイッスPROJECT」始動! アルバイト専用イスを開発し、実店舗で試験導入。プロジェクト動画も公開/2024年8月14日時点
「強い根拠があるというより、慣例的にそうしている」という企業も一定数ありそうです。
立ち仕事は集中力が上がる、運動不足の解消になるなどのメリットがある一方で、腰痛や足の痛み・むくみなどに繋がりやすいデメリットもあります。
スタッフの声や店舗の状況に応じて、規則を見直していく必要があるでしょう。
実際に椅子を導入し、労働環境の改善に取り組んでいる企業もあります。
首都圏に多く展開するスーパーの「ベルク」では、2023年12月から計3店舗でレジ用椅子の試験導入を開始しました。
引用元:株式会社ベルク/ベルク、働く従業員の身体的負担軽減へ レジ業務における“イスに座った接客”取り組み開始/2024年8月14日時点
家庭用の作業用椅子を設置し、レジ内の小さなスペースでも動きやすいようにしています。
従業員からは
●体が疲れにくくなった
●この取り組みを継続してほしい
などの肯定的な声が上がっており、生産性の向上にも寄与しているといいます。
また他にも、株式会社マイナビが2024年3月より「座ってイイッスPROJECT」を発足。
専用椅子を独自に開発し、7月時点で約40社の企業に配布しました。
引用元:株式会社マイナビ/“立ちっぱなし”問題の解決を目指す「座ってイイッスPROJECT」、アルバイト中に座れる「マイナビバイトチェア」約100社で導入決定!導入企業の従業員約7割が「今後も座って働きたい」と回答!/2024年8月14日時点
利用客からの理解を得るために、プロジェクトを周知するステッカーとチラシも合わせて配布し、店頭に掲示しています。
このプロジェクトには「ドン・キホーテ」や「ダイエー」など大手企業が多数参画しており、業界全体の風土変革の先がけとなりそうです。
キャンペーン実施後のアンケートでは、「今後も座って働きたい」と回答した人が全体で約72%と多数を占めました。
引用元:株式会社マイナビ/“立ちっぱなし”問題の解決を目指す「座ってイイッスPROJECT」、アルバイト中に座れる「マイナビバイトチェア」約100社で導入決定!導入企業の従業員約7割が「今後も座って働きたい」と回答!/2024年8月14日時点
また利用客側からも、スタッフが座って働くことについて肯定的な意見が多く出ており、座って働いても印象の悪化に繋がる心配はないことが明らかになっています。
引用元:株式会社マイナビ/“立ちっぱなし”問題の解決を目指す「座ってイイッスPROJECT」、アルバイト中に座れる「マイナビバイトチェア」約100社で導入決定!導入企業の従業員約7割が「今後も座って働きたい」と回答!/2024年8月14日時点
接客業に「座る」という選択肢が生まれることで、体の不自由な方や体力に不安のある方、シニア層など様々な人が働けるようになり、採用の間口が広がります。
いろいろな人にとって働きやすい環境を目指して、自社の規則や設備も見直してみてはいかがでしょうか?