<連載コラム>データに基づいた採用戦略の立て方
1.導入編
2.集客編 ←今回はココ!
3.採用編
4.定着編
前回は、新連載の初回ということで、「データドリブン」という言葉の意味や、採用における役立て方の全体感をお伝え致しました。
今回は「集客編」、データドリブンにしていく対象を集客に絞って解説をしていきます。
まずは、集客をデータドリブンにするにあたって、集客の流れを考えてみましょう。
前提として、求人媒体などを利用している場合、全ての数値が公開されないこともあります。
その場合は、明確に分かる数値のみでやるしかないということも理解しておいてください。
集客は、以下の図の通り、「認知」から「応募」までを対象とします。
自社採用ホームページ、求人媒体など様々な経路はありますが、まずはじめに「●●という会社が、●●という職種で募集をしている」という情報を求職者に認識してもらう(認知してもらう)ことからスタートします。
その後の「興味関心」や「検討」については、絶対的な定義がないので、会社ごとや媒体ごとに細かく定義をする必要があります。
定義の例として
「興味関心」の場合は、
表示だけでなく「クリックをして求人案件(求人原稿)ページを見た」
「検討」は、
「●●分以上求人案件ページを見た」や「2回以上サイトに訪れ、求人案件ページを見た」などをカウントすると良いでしょう。
「応募」は、
その名の通り実際に応募がされたらカウントということでわかりやすいですが、ウェブ上の応募だけでなく電話応募や、直接店舗に来て応募ということもありえますので、極力そういったデータも収集できるような体制を整えることも意識してください。
この後、次回、次々回のコラムも含めて、採用活動の様々なフェーズにおいて、データドリブンにしていくための考え方やヒントをお伝えしていきますが、全体に通じる大前提となる「分析と改善の考え方」をまずはお伝えします。
「認知」から「興味関心」への流れを例として、下図の赤矢印を見て欲しいのですが、
分析・改善をする際の観点としては
●量
●率
●質
に目を向けてください。
まず、「量」についての考え方について、単純化してお話します。
仮に100人の求職者が求人を認知したら、1人応募するという割合(認知からの応募率1%)だったとしましょう。
そして、大体1名採用するのに、10名くらい面接したら誰かは採用になる、という割合(応募からの採用率10%)だったとしましょう。
この場合、10名を採用する計画を立てたら、100名との面接が必要で、100名と面接するためには、10,000人の求職者に認知をしてもらう必要があります。
つまり、「量」を分析し改善することで、目標達成につなげることができることがわかります。
次に、「率」ですが、
これも先程と同じ例を使いますが、もともとが以下の図の状態だったとします。
先ほどは、この表の「量」つまり100名や1名という数値を変化させましたが、
以下のように変化させても、10名の採用は可能です。
今回は、最初の「量」は100人のままですが、認知からの応募率や応募からの採用率といった、「率」を変化させることで、10名採用の目標を達成することができました。
最後に、「質」です。これは結果の数値としては「率・数」に現れてきますので、図表は省略します。
先ほどの「率」の例で、「認知からの応募率を1%から50%に改善」「応募からの採用率を10%から20%に改善」となっていましたね。たとえば応募からの採用率が低い理由が、「面接官(店長)が忙しく、タイムリーに面接出来ていない」などであれば、「質」の問題ではありませんが、「採用したい時間帯と関係ない応募者が多く、採用に至らない」という理由であれば、「質(欲しい時間帯で働ける人の応募)」を改善することで、結果として「応募からの採用率」が改善します。
マーケティングの世界では「ターゲット」と言いますが、きちんと狙ったターゲットが多く含まれるように認知を拡げていくことで、関係ない、興味がない、応募してきても採用できない人からの応募を減らし、結果として「率・数」が改善します。
このように、分析を行う際には、「量」「率」「質」に注目しながら、今、何を改善すべきなのか?を探ってください。
「認知」をどうデータ化(カウント)するかですが、通常はクリックなど必要とせず「目に入って、確認した」程度の意味合いでカウントします。
ただ厳密には「画面に表示はされたが、求職者は見ていない」「見たとしても、記憶に残るほどの注意を持って見ておらず、認識していない」という可能性はありますが、確認するとなると、直接求職者にヒアリングするしかなく、現実的でないため、「表示回数」でカウントします。
ただ「表示回数」も、ウェブ系のものだとカウント方法が2種類ある場合があります。
●「読み込まれたページの情報の中に含まれていた」(こちらが一般的です)
●「求職者の表示している画面上に表示された」
後者は、「視認範囲のインプレッション数(表示回数)」などと呼ばれますが、必ず確認できるわけではありません。
ただ、このような表示回数データも確認できると
●広告が配信されているが、見られていないのか?(視認範囲に入っていないのか?)
●広告が配信され、見られているが、興味を持ってクリックされていないのか?
どちらに問題があるのかを確認できるため、確認できるものはするようにしましょう。
認知の数を増やすためには、露出を増やすということになります。
最小限だと、店舗の貼り紙や自社ホームページのみから始まり、求人広告媒体を各種利用してみる、特定のキーワードでウェブ広告を実施してみる、SNSを運用したり、SNS広告を使ってみるなど、より多くの人の目に触れるためにはどうするか?を考え、実行してみましょう。
もちろん、より採用したい求職者層というのはあると思いますので、そういった方が普段どのように情報収集しているか?を考えると、露出場所のヒントになるでしょう。
まずは計測を始めてデータを取り、「大体1名採用するのにこのくらいのインプレッション数(表示回数)が必要だな」という相場感ができてきたら、
不足していれば新たな露出場所を考える、足りていれば一旦ステイ、というようにデータドリブンな行動ができるようになります。
「興味関心」をデータ化するのは、非常に難しいところです。
なぜかというと「興味関心を持った」というのは、求職者の頭の中にしか答えがなく、厳密にカウントしようとすると、求職者一人ひとりに、「興味関心を持ちましたか?」と聞くしかありません。
ただ、実際問題として現実的ではないので、「通常、興味関心を持たなければしないであろう行動をした人をカウントする」という方法で代替します。
具体的には、一つ前の「認知」では求人原稿や広告などを一覧画面で「見た」数をカウントしていましたが、その後「クリックをして、原稿を開いた」となると、「見た」だけよりは興味関心があると言えるでしょう。
さらに言うと、そのページに「1分以上滞在した」とか「50%以上スクロールした」など付け加えても良いかも知れません。
いずれにせよ、「興味関心が湧いた」というそのものをカウントすることはできないため、「(おそらく)興味関心が湧いたからこそ特定の行動を取った人」をカウントしていきます。
興味関心を持つかどうか、まずは求人案件(求人原稿)や記載している文章などが要因でしょう。
たとえば、Googleで検索した時にあなたの会社の求人案件が検索結果に出たとします。
求職者は、どのような行動をするでしょうか?
まず、シンプルに見ます。ほぼ無意識で「目には入ったけど見ていない」という人もいるでしょうが、まずは見るつまり「認知」をします。その後、記載されている内容を見ます。
通常、Googleの検索結果では、
「ロゴ」「サイト名」「URL」「タイトル」「ディスクリプション」
が表示されています。
これらの情報を見て、
「ちゃんとしたサイトかどうか?」
「クリックしてアクセスしたら、自分の知りたい情報が得られそうか?」
を判断し、クリックするかしないかを決めます。
そのため、興味関心の数を増やすためには、上記の「ロゴ」「サイト名」「URL」「タイトル」「ディスクリプション」を見直し工夫するとともに、当然そこにも記載されるであろう「求人案件(求人原稿)の内容」も重要です。どんなに魅力的な文章で仕事紹介がされていても、時給が低い、シフトの自由がきかないなど、その方の条件に合わない内容であればクリックはしません。
全ての方にマッチする求人案件にはなりませんが、時給他条件面が他求人案件と遜色ないか?という事は確認し、必要があれば修正しましょう。
次に「検討」です。これも「興味関心」同様、厳密には直接ヒアリングしないとわかりませんので、「検討していなければしないであろう行動」をカウントしていきます。
たとえば、「同じページ別日にも見に来て、計2回以上見た」や「応募ボタンをクリックして応募フォームを開いた」「近隣の店舗の求人案件やインタビュー記事なども含めて、2ページ以上見ている」などで数値化すると良いでしょう。
検討の数を増やすには、検討の定義によりますが、まずはスムーズに
●求人案件の検索や比較
●応募へのサイト導線が問題ないか? を確認しましょう。
求職者が案件の情報を見て、「条件など問題なさそうだな、応募してみようかな」と思った時に、すぐに応募ボタンが目に入る場所にあるでしょうか?
近所の案件、条件が似ている案件、閲覧中の案件と同じ職種のインタビュー記事などは、すぐにクリックできる位置にリンクがあるでしょうか?
「検討」の定義とともに、その定義の行動をもっと起こしてもらうためにはどうすれば良いか?考えて実行してみてください。
「応募」は、求職者の行動が明確でカウントしやすいですが、反面、電話での応募の場合など、どの媒体からの効果なのか、手前のデータとの接続が難しくなってしまうこともあるため、注意が必要です。
また、次のコラムで詳しくお話する部分ではありますが、応募後の工程との接続をしていくために、「応募者番号」のようなものを付与しておくと、連携が取りやすくなります。
応募の数を増やすには、前提として検討までは来ている人を対象としているため、「応募自体のしやすさを向上させる」ということになります。
電話応募、ウェブ応募、他にもLINEで応募など、求職者の方が面倒だと思わずに、自分のやりたい方法で応募ができますでしょうか?
ウェブ応募の場合、入力項目が多いとか、答えづらい質問があるとか、応募をためらわせるようなことはないでしょうか?
また、応募後のステップや、応募→面接→採用→勤務開始までの流れや目安の日時などの説明はあるでしょうか?「すぐ働きたいのに、いつから働けるか分からないから応募しない」などとならないよう、様々な角度から応募を阻害する要因を探り、解消していきましょう。
ここまでの説明で、「認知」「興味関心」「検討」「応募」の各ステップの「数」のデータを収集することができました。
次に考えるのは「率」ですので、「認知」→「興味関心」への遷移率、「興味関心」→「検討」への遷移率、「検討」→「応募」への遷移率もそれぞれ計算しておきましょう。
データを蓄積し始めたタイミングでは、なかなかどの繊維率に問題があるか分からないと思います。まずは蓄積を始めて、翌月になったら前月と比較するなど、できることを着実に行って行きましょう。
率が改善・悪化した部分があれば、「なぜ改善・悪化したのだろう?」と仮説を立ててからデータを見てみましょう。
その際、「店舗ごと」「募集職種ごと」「勤務地ごと」「媒体ごと」など、仮説に基づいてさらに切り分けをしてみると、何が起きたかを把握できる可能性が高まります。
率を改善するということは、数を増やすことと同義です。
今まで説明してきた内容を実践していくことで、結果として率は高まります。
※「興味関心の数を増やす施策」=「認知から興味関心への遷移率を増やす施策」
最後に、「質」です。より、応募してもらえそうな求職者に対して、アプローチ出来ていたのか?を、応募者データと掛け合わせて確認していきます。
年齢・性別・属性(高校生/大学生/フリーターなど)・勤務地までの移動手段・希望シフトなど、「応募者」以外は推定データも含まれてしまいますが、どのような求職者が自社の案件と相性が良いのか(数や率が良いのか)を見極めることも大事です。
もちろん、特定の年齢や性別のみ採用するということではなく、必要な応募数を確保するために、より相性の良い求職者を積極的に獲得しにいくという観点です。
また、求人媒体によっては、特定の求職者層に強い・弱いなどもありますので、
「媒体ごと」に比較をしてみることも、自社の求人案件に相性の良い媒体・求職者を探していく手助けになります。
また、サイト上のスタッフ写真やインタビュー記事に掲載する人選など、きちんと相性の良い求職者層が共感し、自分も働けそう!働きたい!と思える内容にしていくことで、結果としてその求職者層の遷移率が向上し、応募数も向上するという事が見込めます。
応募が獲得しやすい層、応募が獲得しづらい層という事も意識し、「誰に」情報を届け、興味を持ってもらい、応募してもらいたいのか?という対象を意識して、全体を見直してみましょう。
データドリブンにしていくための、ベースとなる分析の考え方を学ぶとともに、「データの収集」「データの分析」「データから導かれた施策の実行」について、集客フェーズでの具体的な方法論についてお話していきました。
まずは、集客をデータドリブンにするとともに、次回は採用編ということで、応募〜採用までをデータドリブンにする方法をお話致します。
それでは、また次回「採用」編でお会いしましょう。
株式会社Task it 代表取締役(2016年より現職)
株式会社リクルートジョブズにて人材の営業、新規事業立ち上げ部署などで従事後、ウェブの可能性を感じ独立。ウェブ業界未経験の状態だったものの、ウェブ解析士取得から約1年半でウェブ解析士マスターまで取得。
現在は、個人・企業に対してウェブ解析士講座やGoogle アナリティクス講座の実施や、ウェブコンサルティングを行っている。
著書に「Googleデータポータルによるレポート作成の教科書」や「1週間でGoogle アナリティクス4の基礎が学べる本」がある。(ともに共著)