データに基づいた採用戦略の立て方 <導入編>

感覚ではない、ロジカルな採用を!
人材業界出身のウェブ解析士マスターが解説する「データに基づいた採用戦略の立て方」連載コラムです。
「データドリブン」という考え方に基づき、どうやって採用をもっと効率的・効果的にするのか?について執筆していただきました。第1回目は導入編として、データドリブンについて解説!(2025年2月4日)

<連載コラム>データに基づいた採用戦略の立て方

1.導入編 ←今回はココ!
2.集客編
3.採用編
4.定着編

採用も、もっと「データドリブン」に

こちらの記事を開いて頂き、ありがとうございます。
リクオプサイト、オプラボ内ではいくつか記事を書いておりますので、ご存知の方もいらっしゃるとは思いますが、一応自己紹介から入らせてください。

 

皆さん、こんにちは。人材業界出身のウェブ解析士マスター、佐々木と申します。

ウェブ解析士って、何?という方もいらっしゃるかと思いますので、簡単にご紹介しますと、
「ウェブを使って、『事業の成果』に導くためのお手伝いをする」ということができるようになるための、民間資格になります。(2024年6月より、理事を拝命致しました。)
https://www.waca.or.jp/association/

 

さて今回は、「データに基づいた採用戦略の立て方」ということで、「データドリブン」という考え方に基づき、どうやって採用をもっと効率的・効果的にするのか?について解説していきたいと思います。

 

「データドリブン」という言葉ですが、流行り始めてから10年以上は経っていると思いますので、ご存知の方も多いと思いますが、念の為解説しておきます。

データドリブンは、「データを基に、意思決定をしていく」という意味で、経営やマーケティングの世界では一般的になってきています。

似たような言葉として、「データ活用」というものがありますが、大きな違いとしては、「データ活用」だと、あくまでデータは参考資料として見るだけに留まりますが、「データドリブン」だと、データが良くなったらこうする、悪くなったらこうするというように、データがどうなったか?ということが直接意思決定につながるということが違いになります。

 

具体的には、
集客から採用・定着までのデータを全て取得して、採用までのステップ・フローの中で、大きく数値が減ってしまう(通過率が低い)ポイントを明確に見つけて、対応策を講じるであったり、月ごと、年ごと、職種ごと、店舗ごとなどで集計・比較し、平均より高いもの、低いものの理由を探り、展開できそうなものは横展開する、面接率が悪いことがわかったら、対策し、もし改善しなければまた別の対策を実施するなど、1回1回の「採用できた」「採用できなかった」という結果だけでなく、プロセスの数値も全て取得・分析し、データを基に次の行動を意思決定していきます。

 

「全くデータチェックをしていない!」という方は、なかなかいないとは思いますが、採用という「人」に関わる部分は、あいまいな部分も多く、いわゆる「KKD(勘・経験・度胸)」が判断基準になってしまっている企業も、まだまだ多いのではないでしょうか?

 

 

しかしながら、個人的にはきちんと計測の手段を知り、自社独自のデータ取得などができるようになると、KKDでの判断基準も、データに置き換えることができると思っています。

 

極端な例ですが、面接でいい人を見抜ける面接官の勘や経験というものも、

●候補者の質問回答までのスピード
●面接時間中の笑顔だった時間の割合
●回答内容中のポジティブな言葉の割合

などで、データ化することもできるかもしれません。

勘や経験は、簡単に身につくものではありませんが、データであれば数字を見て誰でも同じ判断ができますので、再現性や拡張性が高くなります。

ぜひ、この記事を参考にデータドリブンでロジカルな採用戦略を立てていってください。

 

<データドリブンのまとめ>

  • データドリブンとは、データを基に、意思決定をしていくこと
  • 参考資料としてデータを見るデータ活用とは違い、データの動きが戦略や施策の意思決定の判断材料になる
  • 採用シーンでは「集客から採用・定着までの全データを取得」をして数字を見る(詳細は次回以降のコラムにて。今回は概要のみ)

データドリブンにするために必要なこと

データドリブンを実現するためには、以下の5つのプロセス構築が必要です。

1.目的とゴールを決める
2.データを収集する
3.データを可視化する
4.データを分析する
5.データから導かれた施策を実行する

それぞれ、解説します。

 1. 目的とゴールを決める

この後の記事内でもご紹介しますが、データは取ろうと思えば大量に取れてしまいます。

それは、単純な量という意味でも、種類という意味でもです。

また、データの中には分析することで意味のある示唆を与えてくれるものもあれば、特に何の示唆も与えてくれないものもあります。

データドリブンはデータを基に意思決定をするので、データが重要だということは間違いありませんが、データを集めることやデータを分析することはあくまで採用成功、ひいてはビジネスの成功が最終的な目的です。

データに溺れてしまうことのないよう、目的・ゴールを明確に決め、目的・ゴールに関係するデータのみ収集・分析するようにしてください。

目的・ゴールは、混同してしまいがちなので、補足すると、「目的」=「何のためにデータドリブンを実施するのか?」、「ゴール」=「どのようなことが実現できれば、データドリブンを実施した成果があったと定義するのか?」という意味で使っています。

 

<「目的とゴールを決める」のまとめ>

  • 何の意思決定が必要なのか? データ収集/分析を実施する目的を決める
  • 目的・ゴールに関連するデータのみ収集・分析をする

 2. データを収集する

こちらが意外と大変なのですが、目的・ゴールを決めたらそこに関係する(因果関係がありそうな)データを収集していきます。

データの中には、求人媒体に掲載した後にレポートとしてもらえるような、ほぼ自動的に取得できるものものあれば、面接官に面接結果をExcel等に入力してもらい、集計をして初めて取得できるようなデータもあります。

データはそこら中に転がってはいるのですが、いざ分析できる形で収集しようとすると、意外と簡単ではないものもあるのです。

また、一度「このデータを収集しよう」と決めても、実際収集・分析をしてみるとあまり示唆が得られなかったり、

もともと課題に感じていたものが解消されることで、その課題解決のために収集していたデータはもう不要になったりと、一度収集すると決めたデータも、定期的に目的・ゴールとともに見直すことも必要です。

 

<「データを収集する」のまとめ>

  • 目的と因果関係がありそうなデータを収集する
  • データの収集方法(自動収集できる/加工が必要)なども確認しておく
  • 定期的なデータ収集項目の見直しも必要

 3. データを可視化する

個人的には、実はこのプロセスが1番重要なのではと思っているのが、データの可視化です。

データの収集で集めたデータは、ものによってはExcelやCSVでの、数字の羅列です。

データ分析を専門にしている人なら慣れたものかもしれませんが、そうでない場合は可視化ができないと分析してみようという気も起きないのではないでしょうか?

 

シンプルには、Excelなどで図表化するという事ですが、理想としてはBI(ビジネスインテリジェンス)ツール、ヴィジュアライゼーションツールといった可視化専用のツールを使うと、より多くの人を分析に巻き込むことができます。

ウェブマーケティング業界などでは、「データの民主化」などと表現をするのですが、なるべく多くの人にデータを見てもらうことで、より示唆のある分析ができるようになります。

次の、「データを分析」するのところに大きく関わるのですが、データを見て何か気づくためには、ある程度の現場感、相場感のようなものがあった方が、すぐにおかしな点に気付くことができます。

 

本社採用担当の方が全店舗分を見ているときには気づかなかったことに、1店舗の店長が、自分の店舗と他の店舗を比較してみているときに気づく、などということはよくあることです。

そのような状況を作り出すためには、まずはデータを可視化し、見やすい状態にすることが大事です。

 

<「データを可視化する」のまとめ>

  • 数字の羅列だった収集データをグラフ化など可視化して、意思決定の判断をしやすくする
  • BIツール等を使い多くの人にデータを見てもらうことで より示唆のある分析もできるようになる

 

※リクオプ事務局より
リクオプでは、採用データ可視化ツール「ドクターリクオプ」を提供しています。リクオプご利用企業様は追加費用なしでご利用いただけます。

ドクターリクオプの採用データ可視化イメージ

 

 4. データを分析する

ここについては、次回以降の記事でより深く説明していこうと思っていますので、大枠の概念の説明にとどめますが、

基本的にはデータの分析は、
分けて
比較する
ということに尽きると思います。(あくまで個人の意見ですが…)

分けるというのは、例えば
プロセスごと、店舗ごと、職種ごと、面接担当者ごと、曜日ごと、時間帯ごと、応募者属性ごと、他にも、月ごと、年度ごとなど、データを何らかのルールで分割することです。

そのうえで、比較をする、
店舗ごとの比較、職種ごとの比較、(媒体社などからの提供があれば)業界標準や競合他社との比較、先月や前年同期との比較などなど、

この「分けて」「比較する」ことが基本です。

ただ、分ける観点も比較する対象も、相当な数がありますので、
分析の前段階として「仮説を立てる」であったり、「異常値、外れ値の検出」なども行っておきます。

事前に仮説を立てておくことで、見るべきデータ、分けるべきデータの分け方、比較するべき対象を決めることができ、総当たり的な分析にならずに済みます。

ということで、一旦概念的なお話は致しましたが、正直なかなか体感として掴むことは難しいと思いますので、後続の記事で具体例も示しながらお話していきます。

<「データを分析する」のまとめ>

  • データ分析の基本は「分けて」「比較する」こと
  • 分析の前段階として「仮説を立てる」「異常値・外れ値の検出」も行っておくとスムーズ

 5. データから導かれた施策を実行する

こちらは、最終段階です。
ここまでのプロセスをきちんと行うことができていれば、データから現状の問題が見えており、大まかにかもしれませんが、やるべき施策というのも見えているはずです。

データドリブンやその手前のデータ分析ができていると、明確な事実(データ)として、施策を実行して改善しなければならない現実を突きつけられますので、基本的には自然と施策実行できるようになるはずです。

しかし、実際は企業内で何か施策を実行しようとすると、予算承認や費用対効果の試算を求められるなど、そうすんなりと行かないこともあるとは思います。

最初のうちはどうしても勝手がわからず、苦労をすると思いますが、だんだんとデータドリブンで施策実施→改善という動きをし始めると、過去同様の施策を実行したときに、どのくらい数値が改善したのか?というデータも溜まってきます。

データドリブンの良いところの一つですが、施策実行した結果も計測しているデータの変化で明確に成功・失敗が分かります。(人によっては嫌な点かもしれませんが…)
そのため、だんだんと、やればやるほど、データ分析→施策実行→データ分析→施策実行というサイクルを回しやすくなります。

もちろん、世の中も使うツールも変わっていきますので、「会社として初めて実施する施策」はなくなりませんが、データドリブンにした方が仕事はしやすくなります。

 

<「データから導かれた施策を実行する」のまとめ>

  • ここまでの分析プロセスで見えてきた現状の問題や課題を解決するための施策を決める
  • 施策を実施し、ふたたび数字を確認する。データの変化で成功/失敗が見えてくる
  • データ分析→施策実行→データ分析→施策実行というサイクルを回していく

採用におけるデータとは?

では、データドリブンの基礎となる「データ」についてですが、採用におけるデータ例を挙げてみます。

皆さんは、この中でどのくらいデータを取って、分析しているでしょうか?

 

応募者データ

年齢・性別・属性(学生/主婦・主夫/フリーターなど)・経験・スキル(資格など)・居住地(応募/採用店舗からの距離や通勤時間など)

集客データ(応募までのデータ)

関連キーワード検索数、検索順位、表示回数、クリック数、クリック率
媒体別表示回数、クリック数、クリック率、応募率などなど…多いので後ほどの記事にてさらに詳しく

選考データ(応募から採用までのデータ)

面接日程調整率、面接率、面接通過率、内定率、内定辞退率

入社後データ(入社後から退職までのデータ)

定着率、在籍期間、評価

 

これらはあくまでも代表的な数値の一例で、取ろうと思えばもっといろいろなデータが取得可能です。

これらのうち、かなりの割合のデータを
・全ての情報を網羅的に
・定期的に取得、分析し
・分析での気付きから、改善施策の実行をし、
・施策実行の結果も、データで振り返りをする

ということが出来ていれば、既にデータドリブンになっていると言っても良いでしょう。

ですが、

・一部のデータしか取得していない
・気がついた時、気になった時しか取得・分析していない
・データはみるものの、そこから施策に活かすということができていない
・施策実行後も、応募数・採用数の変化くらいしか確認していない

という方は、ぜひ今回のコラム連載を読んで、参考にしてみてください。

最後に

本連載は、今回の導入編、集客編、採用編、定着編の4記事を予定しております。

現在、鋭意執筆中ですが、2025年3月末までの執筆完了を目指しておりますので、
ぜひ、楽しみにしながらお読み頂けますと幸いです。

 

それでは、また次回「集客」編でお会いしましょう。

執筆者プロフィール

株式会社Task it 代表取締役(2016年より現職)
株式会社リクルートジョブズにて人材の営業、新規事業立ち上げ部署などで従事後、ウェブの可能性を感じ独立。ウェブ業界未経験の状態だったものの、ウェブ解析士取得から約1年半でウェブ解析士マスターまで取得。
現在は、個人・企業に対してウェブ解析士講座やGoogle アナリティクス講座の実施や、ウェブコンサルティングを行っている。
著書に「Googleデータポータルによるレポート作成の教科書」や「1週間でGoogle アナリティクス4の基礎が学べる本」がある。(ともに共著)

 

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