集客方法①
広告を上手に使おう 〜「ウェブ広告」と「求人広告」〜
前回は、「USP」という考え方をお伝えし、求職者の方に「選ばれる」ような会社になるための方法をお伝えしていきました。今回は、そのUSPもうまく表現していきながら、「広告」を使っていく考え方についてお話をしていきます。
※次に進む前に復習したい方はコチラを先にどうぞ!
(クリックすると該当ページにリンクします)
第1回:<全体像>採用×ウェブ×マーケティングで言っていることとは?
第2回:<行動モデル>ユーザーの行動を考えよう、どうやって探して、何を検討する?
第3回:<USP>なぜ自社は選ばれるのか?を考えて、それをメッセージにしよう
第4回:<集客方法>ウェブ広告と求人広告 ←今回はココです。
皆さんは、おそらく求人広告など当たり前に利用されているかと思いますが、改めて、「何のために使っているのか?」を考えたことはありますでしょうか?
「いやいや、人を採用するためにやっているんだよ!」と、怒られそうですが、もう一歩踏み込んで考えてみてください。
もしかしたら、「なんとなく前任からやっているから」「とりあえず、求人広告企業から営業がきたので」という方も、意外と多いのではないのでしょうか?
もちろん、求人広告も採用手段としては有効ではありますが、「求人において『広告』を使う」ということを、改めて考えてみたいと思います。
ウェブ解析士認定試験公式テキスト2022年版、P.270では広告の目的を
以下3つ(①インプレッション効果 ②トラフィック効果 ③レスポンス効果)に分けています。
要するに、「知ってもらうための広告」と「アクセスしてもらうための広告」と、「応募してもらうための広告」ということです。
一般的な求人広告は、これら全ての役割を併せ持っていることが多いため、あまり意識して使い分けることはなかったかと思いますが、実際には分けて考えていった方が効率的になります。
求人広告は一般的に文章量が多くなったり、検索軸が多くなったりするほど高額になるケースが多いかと思います。
それによって応募が増える可能性があるから、ということで納得感はあるかと思います。
しかし、集客の方法は実はもっとたくさんあります。
今回は広告系に絞ったお話をする予定ですが、次回は広告以外についても触れていきます。
広告は効果が出やすい手段ではありますが、注意点として覚えておいて欲しいのは、「広告は、出している間は効果があるが、止めると効果は0になる」ということです。
広告は広告を販売している企業が、たくさんの候補者を集めてくれている場所、いうなれば好立地の場所に出店させてもらう権利を買っているようなものです。
もちろんそこに広告を掲示することで、多くの人の目に触れ、その多くの人の中には貴社に興味を持ってくれる人がいる可能性も高まり、結果応募が来るということではありますが、広告をやめると、その好立地に掲示をすることはできなくなるので、応募が来ることはなくなります。
ですので、広告を使うこと自体は全く問題ないと思いますが、
「広告で認知してくれた人、アクセスしてくれた求職者」をどうするか?まで考えて欲しいと思っています。
一つは、自社ホームページや採用ホームページ内でもっと多くの情報を掲載し「より興味を持ち、応募したい!というところまで気持ちを高めてもらう」ということですし、もう一つは、「一度来てくれた方に、もう一度来てもらうための行動をする」ということです。
それぞれ、分けてお話をしていきます。
また、最後には「いわゆる『求人広告』以外の広告」についても触れていきます。
求職者に「より興味を持ち、応募したい!というところまで気持ちを高めてもらう」ために、
まずは、「求人広告を出すときに自社ホームページでやること」のテーマからお話します。
求人広告には様々な商品があり、写真や動画の点数、記載できる文章量、検索軸の数、掲載期間などによって値段が変わってきます。
前段でもお話したように、きちんと目的を考えて利用する分には良いのですが、「全部求人広告会社任せ」は、オススメ出来ません。(全てお金で解決したい!ということでしたら、止めはしませんが…)
基本的に、求人広告はまずは「認知」を第一目的とすべきだと考えています。
もちろん、「認知しただけで応募する」求職者も一定数いますので(特に求人サイトを見ている人は、「応募したくて見ている」はずです)そのまま応募が来ることも多々ありますが、改めて客観的な目線で考えてみてください。
人事担当である皆さんは、自社で掲載している原稿の情報だけを見て、「応募したい!と思える!」と、自信を持って言えますでしょうか?
この記事をお読み頂いているのは、主にアルバイト・パート系の募集をされている人事担当の方かと思いますので、もしかすると「自社に応募したいと思える!」という方もいるかもしれませんが、多くの方は、難しいと思うのではないでしょうか。
求人というのは、ある意味”その人の人生を決める”出来事です。
たとえ短期・短時間のアルバイトであったとしても、求職者の人生の中の一部の時間を割いてもらい、またその経験が大なり小なり、その後の求職者の人生にも影響を与えていきます。
それは、求職者目線でもそうです。
大事な人生の一部の時間を、どこで働きどのような経験をするのか?
もちろん正社員ほどではないですが、皆さんしっかりと考えて選んでいるはずです。
何が言いたいかと言うと、そのような選び方をしている求職者の方に「ここで働きたい!」と思っていただくためには、それ相応の情報量が必要だということです。
求人原稿では、まず「自社の求人情報を知ってもらい(認知)、求人情報の内容を読んでもらった上で、自社採用ホームページへのリンクをクリックしてもらう、もしくは検索をしてもらう(興味関心)」
そして、自社採用ホームページ内で様々なメリットの説明や疑問に答えるコンテンツなどを用意し、「働きたい!(応募したい!)」と思ってもらう。
このような流れを作り出せると、求人広告の効果(求人媒体からの応募数ではなく、自社採用ホームページも含めた応募数)が変わってくるはずです。
そして、このときに訴求するべき内容が、前回お話した「USP」になります。
USP(※)は、もちろん求人広告内でも訴求をしますが、完全に理解してもらえるほどの説明を掲載するのは、難しい場合もあると思いますので、求人広告と連動して、自社採用ホームページにもUSPを説明する情報を掲載しましょう。
(このあたり、これから更新予定の第8回:<サイト内回遊>の回で詳しくお話します。)
※USPとは、「Unique Selling Proposition」の略で、訳すと「販売上の、ユニークな(独自の)提案」ということになり、
「自社の商品やサービスが持つ、独自の強み」という意味で使われています。
求人広告は、掲載期間が明確に決まっているものが多く、基本的には掲載期間が終わると閲覧ができなくなります。
つまり、「1ヶ月後から働きたい」と思っている方が、2週間掲載の広告を見た場合、
いざ応募したいと思った時には情報が見れなくなっている可能性があります。
掲載期間中に応募があり、求人枠が埋まっていれば仕方ないですが、
そうでないとしたら、採用担当の皆さんとしても、もったいないですよね。
そこで考えて頂きたいのが「自社採用ホームページに、もう一度来てもらうための工夫」です。
様々な方法が考えられると思いますが、
代表的なものをいくつかお話したいと思います。
通常の採用ホームページであれば、「応募」をしない限り求職者のメールアドレスは取得出来ません。
ですが、例えば「新着求人をお知らせします」や「次回空き枠が出た際にご連絡します」など、理由を作って「応募ではなくメールアドレスを取得する」ということも不可能ではありません。(注:必ず、個人情報収集をする際には、プライバシーポリシー同意を忘れずに取ってくださいね。)
こうすることで、再度来てもらうことも出来ますし、長期間継続をしていくことで「自社で働きたい人データベース」が自然と構築されますので、求人広告を出さずとも、メールを送るだけで採用ができるという可能性もあります。
基本的な考え方はメールと一緒ですが、特に最近の若者はメールアドレスを持っていなかったり、メールをあまり開かないということも言われております。
どこまで拡げるかは、手間との相談にはなりますが、LINEなどでも連絡が取れるようにしておいてあげると、連絡を見てもらえる率が高まります。
一気にテクニカルな話になりますが、「リターゲティング広告、リマーケティング広告」という広告手法があります。
皆さんも、例えば通販サイトなどで検討中の商品を見た時に、その後他のサイトでもその商品のバナー画像の広告で「追いかけられた」という経験がおありではないでしょうか。
はい。それが「リターゲティング広告、リマーケティング広告」です。
つまり、皆さんの会社の採用ホームページを訪れた人だけに、皆さんの会社の採用ホームページを思い出してもらい、もう一度訪問してもらうための広告を出稿することが出来るんです。
設定をきちんとすれば、「原稿まで見た人だけ追いかける」「応募フォームまで見たが、応募完了していない人だけ追いかける」なども出来ますし、
さらに細かい設定をしておくと「その人が見た原稿の内容が入ったバナーで追いかける」なんていうことも出来たりします。(動的リマーケティング)
候補者の中には「今すぐ応募したい!」ではなく、なんとなく次のバイト考えているから探しているという方もいます。その時に、ちょっと気になっていた企業のバナーを 何気ない瞬間にまた目にしたら「印象的で覚えていたから応募しました」なんてことにもなりそうではありませんか?
色々とお話をしましたが、まず理解して頂きたいのは「求人広告を出せば、採用ができる」という訳ではなく、求人広告をやるなら、効果を最大化するためにやるべきことがある。ということを理解してください。
「求人をする=求人広告を出す」というように固定観念が出来てしまっている方も多いかと思いますが、求人をする方法は広告以外にもいろいろとあります。
以下、簡単にですが、思いつくものをまとめてみました。
●検索で見つけてもらう(自社採用ホームページ)
●広告で見つけてもらう(求人広告、通常のウェブ広告)
●自社以外のサイトで紹介してもらう(個人ブログや系列企業のサイト、自社ブランドサイトなど)
●SNS
●メール
〜ここからオフライン〜
●張り紙、ポスター、チラシ、ショップカード
●紹介
●派遣やスポットサービス
大きくジャンル分けをすると、上記のようになるでしょうか。
一般的なウェブサイトの解析でも、このように流入元(サイトにたどり着いた方法)をジャンル分けし、「チャネル」と呼んでいます。
基本的には、候補者は一人ひとり様々な方がいて、求人の探し方も様々です。
求人サイトを見て、色々と比較する方もいれば、「絶対ここで働きたい!」と企業名で検索する方もいますし、検索は使わず「友だちの紹介」で働く人や、SNSで見て面白そうだったから働く…などなど、千差万別です。
つまり、この「チャネル」を一部に限定してしまうということは、それだけで機会損失なのです。
全体を俯瞰的に捉えて「やっていないことはないか?もっとできることはないか?」と新しいことにチャレンジしてみてください。
今回は、その中でも「ウェブ広告」について詳しくご紹介をしたいと思います。
ここから3回分「集客系」のお話(※)をしますので、思いついたことをこちらのシートに書き留めながら読んでみてください。
※ここから3回分「集客系」のお話:今後の連載予定
第4回:<集客方法>ウェブ広告と求人広告 ←今回はココ
第5回:<集客方法>リファラルとは?
第6回:<集客方法>検索キーワードの考え方、上位の狙い方
求人で広告というと「求人メディアに出稿する広告」しかないように思ってしまっている方も多いかもしれませんが、いわゆる「リスティング広告」や「ディスプレイ(バナー)広告」といったものを、求人で出すことも可能ですし、既に実行している企業もあります。
それぞれ簡単に仕組みをお伝えすると、
候補者がGoogle 等検索サイトでキーワード検索した際に、関連する広告が検索結果の上下に表示されるもの。
出稿する企業側は、出稿したいキーワードを決め、広告文を作成し、CPC(1クリックの単価)を決めて、出稿します。
CPCの高さや、検索キーワードと広告文の関連性の高さなど、様々な要因で順位が決まります。
バナー(画像)を使った広告で、Google等が提携しているサイト(ニュースサイトや個人ブログなど)に、入稿した広告バナーが掲載されます。
出稿方法は、大きく分けると2つ。
1つ目は、「人」に対しての出稿。サイトに訪れた人(リマーケティング)や、年齢・性別・興味のあることなどの条件が合う方がサイトを見ている時に表示をします。
2つ目は、「場所」に対しての出稿。提携サイトであればサイトを指定したり、例えば「ゲーム」に関連するトピックのサイトにのみ掲載をするなどの指定方法があります。
好きなことを仕事にしたい!という方も多いでしょうから、自社に関連するトピックや、関連する情報が掲載されているサイトに絞っての出稿だと、コストも抑えられ、効果も高まる可能性があります。
以上2つが、最も一般的な「ウェブ広告」になります。
ディスプレイ広告は、バナーの作成なども必要なので(最近では、画像と文字をアップロードしておけば、自動でやってくれるようになっていますが)少しハードルは高いかも知れません。
リスティング広告は、文字だけで出来ますので、そこまでハードルは高くないと思います。
また、求人広告を取り扱っている企業でも通常のウェブ広告も取り扱っていたり、一般的なウェブ広告代理店に相談してみても良いと思います。
ぜひ、ウェブ広告も使ってみてください。
私個人の経験としては、もともと求人広告会社につとめておりましたので、そこまで一般的なウェブ広告については詳しくありませんでしたが、学んでいくうちに、「なぜ、求人でウェブ広告を出さないのだろう…」と疑問に思うようになりました。
基本的に、非常に安い金額から使えて、表示される、クリックされるなど、実際のアクションがあった際に課金される形態のため、しっかりと考えて使えば、非常にコストパフォーマンスの良い手法です。
ぜひ、利用を検討してみてください。
株式会社Task it 代表取締役(2016年より現職)
株式会社リクルートジョブズにて人材の営業、新規事業立ち上げ部署などで従事後、ウェブの可能性を感じ独立。ウェブ業界未経験の状態だったものの、ウェブ解析士取得から約1年半でウェブ解析士マスターまで取得。
現在は、個人・企業に対してウェブ解析士講座やGoogle アナリティクス講座の実施や、ウェブコンサルティングを行っている。
著書に「Googleデータポータルによるレポート作成の教科書」や「1週間でGoogle アナリティクス4の基礎が学べる本」がある。(ともに共著)