<第3回> なぜ自社は選ばれるのか?を考えて、それをメッセージにしよう
前回は、「ユーザー」について深く知り、自社がターゲットとしている求職者に向けて、効果的に認知してもらったり、検討・応募・シェアなどしてもらうために「行動モデル」という考え方をお伝えしました。
「行動モデル」を参考にしながら、どのようにターゲットユーザー(求職者)にアプローチをすれば良いかを考えることで、無駄なく、そして漏れなく求職者にアプローチが可能となります。
さて今回は、そういった「採用×マーケティング」活動をしていく中で、「何をメッセージとして伝えるか?」ということについて、「USP(Unique Selling Proposition)(読み:ユーエスピー)」 という考え方をご紹介したいと思います。
※次に進む前に復習したい方はコチラを先にどうぞ!
(クリックすると該当ページにリンクします)
第1回:<全体像>採用×ウェブ×マーケティングで言っていることとは?
第2回:<行動モデル>ユーザーの行動を考えよう、どうやって探して、何を検討する?
第3回:<USP>なぜ自社は選ばれるのか?を考えて、それをメッセージにしよう ←今回はココです。
USPとは、「Unique Selling Proposition」の略で、
訳すと「販売上の、ユニークな(独自の)提案」ということになり、
「自社の商品やサービスが持つ、独自の強み」
というような意味で使われています。
マーケティング業界、特にコモディティと呼ばれる日用品(シャンプーや洗剤など)においては、かなり似たような商品が多く出てきます。その中で
「選ばれる商品」になるために、広告において「USP≒自社商品独自の強み」を打ち出せるかどうか?
が大きく売上に関わってくるのです。
私は、これは採用においても全く同じだと思っています。
例えば分かりやすくコンビニを例にしてお話をしますが、私が住んでいる駅では、家から近い順にA、B、Cの3つのコンビニがあります。
仮に時給はどのコンビニも全く一緒だとして、家から近いAを必ず選ぶものでしょうか?
そうとは限らないと思います。
もちろん「家から近い」、「時給が高い」などの条件面も重要ですが、「働く」というのは自分の人生の中の、それなりの時間を費やすことですので、生活の大きな部分を占めます。
そう考えると、条件だけではない部分でも特長があり、自身が納得出来る内容であれば、敢えて条件が少し悪い方でも選ぶ、ということも出てくるかと思います。
おそらく、皆さんもUSPという言葉は使わずとも、同じようなことは考えながら採用をしているとは思います。(「採用競合と比較しての強み」などですかね。)
ですが、改めて「USP」という言葉の定義を前提に、ぜひ一度明確に言語化をし、採用チーム内などで共有をするようにしてみてください。
これができていないと、「時給」や「勤務地」など条件面のみの比較となってしまい、「選ばれない企業」になってしまう可能性が高くなってしまいます。
「そんなこと言われても、ウチなんて普通の企業だし、取り立てて強みなんてないよ…」
そんな声も聞こえてきそうですが、大丈夫です。
必ず、USPつまり皆さんの会社ならではの強みが必ずあります。
さらに言うと、「採用でのUSP」で良いので、
・自社の求人エリアの中でのUSP
・自社の募集職種の中でのUSP
のように、あくまで「比較された時に選んでもらえる」レベルで良いということです。
つまり、100人いたら100人がメリットと感じることでなくても良くて、その100人の中の、いろいろな趣味趣向の人が、いろいろな条件で探している中から、「刺さる人には刺さる」程度でも、充分なんです。
また、新店募集などは少し当てはまりませんが、既にお店や企業がある場合、募集職種で働いている先輩スタッフがいますよね?
ということは、(100点満点!ではないかも知れませんが…)その先輩スタッフたちは、会社やそこでの仕事を「良い」と感じ、選んで、納得して働いているということです。
意外と良いと感じた、選んだ理由が 実は「シンプルなこと、当たり前と思っていたから書かなかったこと」の可能性もあります。
「交通費の上限が競合より高かった」、「シフトの提出がギリギリで融通がつけやすい」、「最低出勤日数が少なくて良い」「研修中も給与が変わらない」「制服を支給してくれる」「社員割引がお得」「まかないが勤務時間前後も出る」などなど、自社の募集を日々行っている皆さんからすると当たり前のことも、他社と比較をしている求職者からすると、「他社にない強み」に見えているかも知れません。
まずは、「USPは必ずある!」ということを念頭に置いて、この後の記事を読み進めてください。
さて、それでは実際にUSPを考えてみましょう。
USPには3つの要件があります。(wikipediaより、翻訳は筆者)
1.全ての広告は、消費者に対しての「提案」がなければならない。
ただの言葉や、誇大広告やウィンドウショッピングのように写真を並べるのではなく、
広告を読んだ人に「この明確なベネフィットのために、この製品を買うべきだ」と提案しなければならない。
2.その提案は、競合他社が提案していないもしくはできないものでなければならない。
広告のその他の部分は違っても、ブランドもしくは主張がユニークでなければならない。
3.その提案は、大衆を動かすほど強力なものでなければならない。
つまり新規顧客だけでなく、潜在的な顧客まで惹きつけるほどに。
この3つの条件がUSPの定義でもありますが、あくまで商品の購入を促す「販促広告」を前提として書かれたものなので、「求人広告(求人原稿)」用に少し読み替える必要があります。
1.求人広告(原稿)では求職者に対して、その仕事で働いた時の明確なメリット・ベネフィットを「提案」しなければならない。
2.その「提案」は、自社オリジナルのもので、他社が真似できないもしくは真似しようと思わないものでなければならない。
3.その「提案」は、検討中の求職者に応募を決めさせるだけでなく、もともとその求人を知らなかった人も、求人広告(原稿)を見たら応募したくなるようなものでなければならない。
このような感じでしょうか。
もちろん、この条件全てに完璧に当てはまる「提案」を見つけることは、容易ではないでしょう。
(ぜひチャレンジはして欲しいのですが)
まずは時間を取って、「競合にない自社の強み」や「競合ではなく自社で働くことのメリット」をピックアップしてみましょう。
その際重要なのは、ハード面(時給や勤務地などの条件面)だけではなく、ソフト面(社風や仕事内容、一緒に働く人、研修環境など)にも目を向けると、競合他社との違いを見つけやすくなると思います。
また、ユーザー目線を重視するという意味では、「実際に採用した方へのヒアリング」なども行うと良いでしょう。
採用や人事をやっている皆さんが感じる「メリット・ベネフィット」と、求職者の方が感じる「メリット・ベネフィット」には、必ずズレがあるはずです。
あくまで、この連載記事のメインメッセージは「ユーザー(求職者)に寄り添う」ということです。
ユーザー(求職者)が、見たり聞いたりしたら、応募したくなるような魅力的な「提案」を考えて見てください。
USPを考えてみよう!
それでは今回も、簡単なワークを用意しましたので、最後に取り組んでみてください。
ワークシートはこちらにありますので、ダウンロードしてお使いください。
ワークシートには、7つの質問があります。
ここでは各項目について、説明しますので
ダウンロードして、ぜひ自社の採用USPを考えてみてください!
Q1.採用上の競合企業はどこですか?
ビジネス上の競合ではなく「採用上の競合企業」というところがポイントです。
求職者は様々な観点で仕事を探しています。
例えば皆さんが街の喫茶店のオーナーで、求人をしているとして、
「カフェで働きたい人」を採りたいなら、近隣のカフェが採用競合でしょう。
これは、分かりやすくビジネス上の競合でもありますので、シンプルですね。
しかし、「接客業で働きたい人」を採りたいなら、
アパレルや本屋さんなども検討している方もターゲットなりますし、
アパレルや本屋さんが喫茶店の「採用上の競合」になると言えます。
ビジネス上の競合は、ほぼ仕事内容なども一緒になってくるので、当然採用上の競合にもなるかと思いますが、採用成功をさせるためには、少しターゲットを拡げてみることもおすすめです。世の中には「絶対にカフェで働きたい!」という人もいれば、「人と会話するのが好きだから、接客業ならなんでも!」という人もいます。
ぜひ、「ビジネス上の競合」だけでなく「採用上の競合」もピックアップするようにしてみてください。
Q2.採用上の競合企業について、以下の内容を調べて、比較してみましょう。
こちらは、簡単な比較表になりますが、改めて採用競合についての情報調査をしてみましょう。
時給は勝っている!と思っていても、再度調べてみると改定されて負けているかも(※)知れません。
また、USPを発見するためには、「採用競合が何をアピールしているか?」も重要な情報になりますので、
まずはワークシートにある項目を調べてまとめてみましょう。
あくまで簡単な比較表になりますので、
その他気づいたポイントなどあれば、Excel等にまとめた表を作ってみるのも良いと思います。
※リクオプご利用企業様は、「求人案件管理」内の「時給相場マップ」を活用して
競合や近隣エリアの時給をお調べいただけます。
Q3.その企業と比較されて、負けていると思うポイントはどこですか?
これは「敢えて」ですが、負けているポイントを書いてもらうことにしました。
最終的にはメリットを出したいのですが、悲しいかな、日本人の性としては、強みやメリットを書きなさいというと、謙虚になってしまいなかなか出てこないんですね。
ただ、通常メリットはデメリットの裏返しでもあります。
・駅から遠い→近所に住んでいる人にとっては、駅までの道の途中で通える
・シフトにいっぱい入ってもらう必要がある→たくさん稼げる
などなど、
ユーザーによってはメリットと感じる人もいます。
この変換は後ほどやりますので、まずは思いつく限り「負けていると思うポイント」を書き出してみましょう。
Q4.「Q3」で書いた負けているポイント以外で、自社の仕事が魅力的に感じるポイントはどこですか?
負けているポイントは、なかなか負けないようにするもしくは勝てるようにするのが大変だと思いますので、
(例:時給が負けているから時給を競合より高くするなど)
「違う土俵で勝負をする」ということも考えてみましょう。
USPの条件にもありましたよね?「競合が提案していない、もしくは真似できない提案」ですので、もし「競合は言っていないけど、自社で言えるメリット」などがあれば、どんどんここでピックアップしてみましょう。
基本的に、「求人広告(原稿)に書いていない=条件としてない」と求職者はみなします。
極端な話、競合が「交通費支給」と書いていないのであれば(本当にないのか、書期忘れているのかはさておき)、自社の求人に「交通費支給」と書くだけでも、競合と比較しての強みとして、求職者に認識してもらえる可能性もあります。
このように、一見「当たり前」と思われるものも見逃さず、書き出してみましょう。
Q5.「Q3」で書いた負けているポイントを逆にメリットとして捉えると、どうなりますか?
ここでは、先程少し予告をしましたが、Q3で敢えて負けているポイントを書き出して頂きましたが、それをメリットとして捉え直すワークをしていきます。
メリットはデメリットの裏返し、誰かがデメリットと感じることも、別の人ならメリットに感じることもありますので、ぜひ「ポジティブ変換」をしてメリットに書き換えてみてください。
Q6.採用した方から、よく言われる「入社理由」や「入社の決め手」はなんですか?
ここでは、メリットの「人事目線」と「ユーザー(求職者)目線」のすり合わせをしていきます。
人事が「これはメリットだろう!」と思っていること以外にも、求職者目線で見るとメリットと感じることも意外とありますので、実際に入社した方の入社理由や入社の決め手(求職者も競合と比較して比べて、自社を選んでくれている可能性があります)から、改めて「ユーザー(求職者)目線」でのメリットをピックアップしていきましょう。
Q7.今まで書いた内容を、まとめると?
最後はまとめです。
今までのワークを通して、「競合にない自社の強み・メリット」が浮き彫りになってきたのではないでしょうか?
それを最後に、伝わりやすいメッセージとしてまとめます。
穴埋め形式にしましたので、入力をしながら、強力な「提案」を作りましょう。
ということで、今月の内容は以上となりますが、
「なぜ自社が選ばれるのか?≒自社の採用上の強み≒USP」を探し、まとめて言語化し、求人原稿で積極的に使っていってください。
次回は、「集客方法について〜ウェブ広告と求人広告〜」についてお話します。
ぜひお楽しみに!
株式会社Task it 代表取締役(2016年より現職)
株式会社リクルートジョブズにて人材の営業、新規事業立ち上げ部署などで従事後、ウェブの可能性を感じ独立。ウェブ業界未経験の状態だったものの、ウェブ解析士取得から約1年半でウェブ解析士マスターまで取得。
現在は、個人・企業に対してウェブ解析士講座やGoogle アナリティクス講座の実施や、ウェブコンサルティングを行っている。
著書に「Googleデータポータルによるレポート作成の教科書」や「1週間でGoogle アナリティクス4の基礎が学べる本」がある。(ともに共著)