採用ホームページ活用のススメ 第3回

採用ホームページ リニューアルの具体的な企画案作成について

前回の振り返りと今回のお話について

前回は、改めて採用ホームページの全施策の中での立ち位置の確認と、リニューアルの定義、そしていつリニューアルを行えばいいのか?リニューアルに際しては、どんなことを考えなければいけないのか?などをお話しました。

今回は、前回までの内容で「じゃあ、リニューアルをしようか!」と具体的になった際に、社内稟議を通すための企画書の作り方をお伝えしていきます。

企画書作成の前提
①リニューアル単体で進めることは極力避ける

今回の記事は、企画書作成をワークシート形式で進めていく形になるので、企画書作成の前提として先にいくつかお伝えします。

企業名やコーポレートカラーなどが変わり、そこで予算が取れていてリニューアルが必須という状態であれば構いませんが、前回もお伝えしたように、リニューアルの効果は限定的です。

リニューアル単体で企画として上げてしまうと、コスパが悪いということで却下されてしまう可能性もありますので、できれば、リニューアルきっかけで併せて効果UPのためにできることはないか?と考え、他に集客目的の施策や、応募率向上に向けた施策で必要だと思うものがあれば、ぜひまとめて企画として提出するようにしてください。

企画書作成の前提
②企画書に含めるべき内容

ワークシートに沿って書き進めて頂ければ問題ないかと思いますが、企画を通すためには含めるべき内容があります。

結局、一番大事なのは費用対効果ではありますが、費用対効果を納得してもらうためには、

現状把握(前提の整理)

問題点の抽出

問題に対しての打ち手

打ち手の具体的な内容

費用対効果(かかる費用と、打ち手を実施することで何の数字がどれだけ改善するのか?)

スケジュール

最低限この内容は必要だと考えられます。
必要に応じて、市況感や他社事例など入れても良いですが、まずは上記で話の根幹を固めることを意識してください。

ワークシートを埋めてみましょう

それでは、ここからは実際にワークシートを埋めながら、最終的に「(リニューアルも含めた)採用ホームページ効果UPに向けての対策案」という、社内企画書完成を目指して、進めていきましょう。

ワークシートは、まずテンプレート、次のページに記入例という順番で掲載されていますので、記入例と当記事の説明を見ながらまずは記入してみて、最後に記入例を削除して社内容資料として使ってください。

では、1項目ずつ説明していきます。

 

ワークシートをダウンロードする

ー 0.タイトル

タイトルについては、あえて「リニューアルの提案」ではなく、「効果UPに向けての対策案」としました。

理由としては、前回の記事でもお伝えしましたように、「採用ホームページリニューアル」単体ではそこまで大きな効果は出づらいと考えており、リニューアル単体の提案では社内でも通りにくいのではないかと考えているからです。

当記事やサンプルでは、説明が必要なリニューアル関連の話のみ説明しますが、ぜひ企画書を作る際は、リニューアルだけでなくその他集客系の施策なども一緒に考えるようにしてください。

また、全体の大まかな流れとしては、「現状分析→課題抽出→施策提案」という流れになっていますので、そこも意識をしながら作ってみてください。

ー 1.現状の採用ホームページについて

こちらは、2スライドに分けております。2スライド目は提案する相手の理解度に応じて省いても構いませんが、後々、関係者からのデザインOKをもらいやすくするためにも、そのまま入れておくことをオススメします。

 

【1ページ目】

まずは、現在の採用ホームページがどのような経緯・目的・意図で、いつ、誰の管理・作業において作られたのか?ということを、共通認識となるようにまとめておきます。

場合によっては、皆さん人事メンバー自体も新陳代謝などあり、「誰も当時のことを知らない…」なんていうことになっている場合もあるかと思います。

その場合には、サイトを作ってくれた制作会社の担当者に問い合わせるなどもしつつ、可能な限り「今、なぜこのサイトになっているのか?」を明らかにしましょう。

 

【2ページ目】

次に、リニューアルにあたってのデザイン確認・決定をスムーズにするために、スマホ比率について、共通認識化しておきます。

採用ホームページは、求職者に向けたページのためほぼ例外なくスマホでの閲覧(スマホ比率)が高いはずです。
そのため、デザインや求職者の使い勝手なども、全てスマホ中心に考えていくべきなのですが、デザイン確認時など、ついついPC版のデザインで確認を進めてしまい、スマホ版がおろそかになってしまうことがよくあります。

こちらのページでしっかりと「スマホでの閲覧が圧倒的に多い(だからデザインはスマホ中心に考えましょう)」ということを、改めて提示し、共通認識化してください。

 

【3ページ目】

こちらのページでは、「現状の採用ホームページに関わる数値的課題」を明らかにします。

この後のページで、具体的な問題点や対応策について企画をしていきますが、「実際に問題が起きている」ということを、数値(データ)でも表すことで、説得力を増すことができます。

サンプルは簡単なものしか入れておりませんが、
「集客数が減っている」(具体的にどの経路からの集客数が減っているのか?など)
「ページビュー数が減っている」(特定のページが見られなくなってきているのか?、ユーザー一人当たりのページ閲覧数が減ってきているのか?など)、
「コンバージョン率が下がってきいる」(集客している層とターゲットが合っていないのか?、新規ユーザーばかりでリピートしないため、あまり情報を読み込んでくれていないのか?、応募しやすい案件が出ていないのか?など)

ぜひGoogle アナリティクスなどの分析ツールも使いながら、数値的に「今どこに問題があるのか?」を洗い出してください。

 

ー 2.達成したい目的

次に、前ページまでに記載した「採用ホームページの現状」と「採用ホームページの数値的問題点」を踏まえ、どのように変えていきたいのか?つまり「今回の対策案で達成したい目的」を記載していきます。

目的達成のための手段(施策・対策)は、後ろのページで具体的に記載していきますが、まずはコンセプトとして「ここが問題なので、こういう風に変えていきたい!」ということをわかりやすく示してください。

リニューアルに関連させると、デザインの良し悪しを決める際に、ここで記載した目的が達成できるようになっていればOKで、そうでなければ修正が必要という、判断軸にもなりますので、しっかりと考えて決めるようにしてください。

ー 3.目的達成のための手段

2では、あくまで「こういうことが達成されればOK!」という、目指すべき方向を示しただけでしたが、実際に目的を達成するためには、対策・施策を企画し、実行しなければなりません。

そこで、こちらのページではこれまでに示してきた「問題点(現状の課題)」を解消し、「目的(達成したい姿)」になっていくための具体的な対策・施策を記載します。

ここでは、なるべく具体的かつ簡潔に、文章ベースで施策を記載していきます。

各施策の詳細については、次の「施策案」のところで図解なども使いながらさらに詳細に記載しますので、ここでは「目的達成のための手段をある程度イメージが付く程度の具体性で、一覧で示す」ということを意識してください。

ー 4.施策案

ここでは、一つ前の項目で大まかに説明した項目を、もう少し解像度を上げて具体的に説明していきます。

ここでは、ぜひ画像などもふんだんに使いながら「具体的に何をやろうとしているのか?」を伝え、稟議を通しやすくしましょう。

ー 5.施策選定の理由と期待効果

ここでは、施策の選定理由と施策を実行した場合に期待される効果(数値の変化)について記載します。

まず、施策選定の理由については、前提として選ばなかった施策についても複数考えておく必要があります。

例えば、「ウェブサイトリニューアル」を施策として選択したのであれば、「リニューアルでない施策(今回選ばなかった施策)」があるはずです。この場合ですと、「リニューアルではないが、小規模な写真変更や文言変更」が、該当します。

もしかすると、直感で「リニューアルしよう!」と考えて提案してしまう方もいるかも知れませんが、提案を承認する側の気持ちとしては、「本当にこの施策・対策がベストなの?」「他のやり方はない?もっといいやり方があるのでは?」と思ってしまうものです。

そのため、実際には提案しないものではありますが、同じ目的を達成するための他の施策も考えてみて、最終的に複数を比較した中で実施するべき施策を選ぶようにしてください。

これをやってみると、意外と自分でも「あれ?最初はこっちの施策がいいと思ったけど、新しく考えた別の施策の方がもっといいな!」となることも多いです。

 

次に期待効果ですが、これについては「非常に想定することが難しい」ということを先にお伝えしておきます。(別の言い方をすると、「やってみないとわからない」)

しかしながら、会社として予算を使う以上、通常は「期待される効果」が示されなければ、「費用対効果」を計算することができないため、提案を通すことができないとなってしまいます。

 

考えるときのポイントとしては、

過去に別の施策などで改善できた率などを参考にする
(制作会社等にヒアリングし)他社事例などを基に、現実的な改善数値を出す
「応募数」や「応募率(コンバージョン率)」など、サイト全体を総括するような数値を期待効果として含めることは避ける

ということです。

最後の点だけ、補足が必要かと思いますので補足をすると、「応募数」や「応募率(コンバージョン率)」は、もちろん提案をする施策を通して、最終的に改善はしていきたいのですが、これらの数値はサイト全体の全てに対しての最終評価となるような数値であり、つまりは「応募数」や「応募率(コンバージョン率)」の変化に影響を与える要素が多すぎるため、1つの施策の期待効果とするのには適しません。

具体的に言うと、確かにリニューアルをすることでイメージの改善や導線の改善などが行われ、「応募数」や「応募率(コンバージョン率)」が向上することが期待できます。
しかし、リニューアル後に時期的な要因や、そのタイミングで広告を打たなくなったなど、人為的な要因で採用ホームページへのアクセス数(セッション数)が減ったとします。
そうすると、仮にリニューアルでコンバージョン率が改善されている状況だとしても、アクセス数が少ないため、結果としては応募数は少なくなるでしょう。

また、コンバージョン率についても、リニューアルが功を奏し、本来は上がっているはずでも、人気案件(例えばオープニング案件)がリニューアル前にはあったのに、リニューアル後にはなかった、などの変化で、見た目上コンバージョン率がリニューアル後に落ちているように見えてしまうかもしれません。

そのため、企画書の例でも挙げましたが「TOPページから職種紹介ページへの遷移率」「職種紹介ページのスクロール率」など、リニューアルによって直接的に変えられる数値のみ、期待効果として提示するようにして下さい。

ー 6.費用について

費用と次のスケジュールについては、実際には制作会社等から提示されたものを添付する形になるかと思いますが、複数パターン提示された場合には、どのプランをなぜ選ぼうとしているのか?の説明も付け加えるようにしてください。

また、企画を通すためには適正に相見積もりを取得して比較をすることも良いと思いますが、安すぎるものには注意をしてください。

もちろん企業努力などにより、素晴らしいサービスが安い価格で提供されている可能性もなくはありませんが、通常は金額とサービス内容は見合っているはずです。
安いホームページ制作では、テンプレートに当て込むだけでデザインや機能の融通が効かなかったり、ヒアリングをして作成をしてくれるというより、発注側主導でプロジェクトを進めていかなければならなかったりなどする場合が多いので、きちんと確認するようにしてください。

社内のホームページ制作の知見がある部署と密に連携を取りながらできるなら良いのですが、なかなか思い通りのものが出来ず、うまく効果に繋げられなければ本末転倒です。

ー 7.スケジュールについて

スケジュールについても、基本的には制作会社側から提示されるかと思いますが、注意点をいくつかお伝えしておきます。

【1】発注内容が変わると、全体スケジュールも変更になる
【2】発注側の確認作業が遅れると、全体スケジュールが遅れる
【3】写真撮影、インタビューなど、現場メンバーとの調整が必要となる

この3つについては認識をしておくようにしてください。

 

【1】発注内容が変わると、全体スケジュールも変更になる

リニューアルに期限がある場合、途中で発注内容を変えてしまうと期限に間に合わなくなる場合があります。

制作会社側も、スケジュールを提示した段階での発注内容(作業内容)に併せてスケジュールを作っています。作成するページを増やす、インタビューや撮影の人数を増やす、日程を変更する、デザイン確認の人数を増やすなどしていくと、当初立てたスケジュールでは対応しきれなくなることがありますので、
プロジェクト開始初期に、しっかりと会話して発注内容を早めに確定させるようにしてください。

 

【2】発注側の確認作業が遅れると、全体スケジュールが遅れる

ホームページの制作作業で必ず必要になってくるのが、発注者側の確認作業です。
デザインや文章、写真の確認など、都度「制作会社が作成→発注者側が確認→(必要に応じ)制作会社が修正→発注者側が確認」と、確認を入れながらフローが進んでいきます。

制作側が期日通りに作成をしたとしても、確認が期日通りに終わらなければ、どんどんスケジュールが遅れていきます。

特に注意が必要なのが、現場の方や上長の方に確認をもらう時です。
急に長期休暇に入っていた、上長が忙しすぎてすぐに確認できない…など、よくある落とし穴ですので、スケジュールが出た段階で事前に「この時期に確認作業が入るので、時間を空けておいてください」と、予め予定確保をしてもらっておくことをおすすめ致します。

 

【3】写真撮影、インタビューなど、現場メンバーとの調整が必要となる

実際に撮影をするのはカメラマンやインタビューをするのはライターの方になりますが、
「いつ」「どこで」「誰と」するのか?は、人事担当側で調整をする必要があります。

撮影であれば、複数名の集合写真など必要な場合もありますので、全員が集まっており、なおかつお店の繁忙具合も考慮して集まって撮影できるタイミングがある日や時間なのか?
インタビューであれば、一人の方に短くても30分〜1時間程度は時間を空けてもらう必要があります。

実際に撮影される、インタビューされる方の理解はもちろん、現場の店長さんなど管理者の方にもその旨しっかりと伝わっていないと、思ったような写真が撮れなかったり、最悪リスケジュール(多くの場合、キャンセル料も上乗せされます)となる場合もありますので、ご注意ください。
「ホームページ制作は専門家に丸投げできるから楽だ!」と思うかもしれませんが、意外と発注者である人事側でもやることは多くあります。

最後に

ということで、3回にわたり「採用ホームページ活用のススメ」というテーマで、主に採用ホームページの活用とリニューアルについてお伝えをして参りました。

お伝えしてきたように、採用ホームページは当たり前にあるべきなので、なければ作るべきですし、作った後も定期的にリニューアルをせざるを得ない時期がやってきます。

私自身、ウェブマーケティングを生業にしている仕事柄、制作会社さんとのやり取りも多く、少し制作会社さん目線になってしまっている部分もあるのではと思いますが、ぜひ、制作会社さんをパートナーとして味方につけて、より良い採用ホームページを作り・メンテナンスしていけるようになって行ってください。

 

本連載が、少しでもお役に立てば幸いです。また、別の連載でお会いしましょう。

執筆者プロフィール

株式会社Task it 代表取締役(2016年より現職)
株式会社リクルートジョブズにて人材の営業、新規事業立ち上げ部署などで従事後、ウェブの可能性を感じ独立。ウェブ業界未経験の状態だったものの、ウェブ解析士取得から約1年半でウェブ解析士マスターまで取得。
現在は、個人・企業に対してウェブ解析士講座やGoogle アナリティクス講座の実施や、ウェブコンサルティングを行っている。
著書に「Googleデータポータルによるレポート作成の教科書」や「1週間でGoogle アナリティクス4の基礎が学べる本」がある。(ともに共著)