社会保険の適用拡大が行われる10月まで、残すところ4カ月を切りました。
以後は従業員数が51人以上の企業に対して、短時間労働者の社会保険加入が義務化されます。
今回は、適用となる要件と対象企業が取るべき対応について詳しくご紹介します。
更新日:2024年6月26日
記事提供:株式会社フロッグ様
社会保険は、病気やけが、災害などに見舞われた際に、経済的な補償や生活の支援をすることを目的として制度化されたものです。企業勤めの会社員や、条件を満たす短時間労働者が加入する保険です。
「健康保険」「年金」「介護保険」「労災保険」「雇用保険」を総称して(広義の)社会保険と呼び、その中でも「健康保険」「年金」「介護保険」の3つを狭義の社会保険、「労災保険」「雇用保険」の2つを労働保険といいます。
2024年10月に施行される社会保険の適用拡大では、
狭義の社会保険(健康保険、年金、介護保険)の適用範囲が変わります。
厚生労働省「我が国の人口について」によると、2040年には、65歳以上の人口が全人口の約35%になると推計されています。
2040年には、約3人に1人は高齢者となり、少子高齢化の加速が予想されます。
働き盛りの労働人口が減少すれば、納める社会保険料の額が減少し、年金財政に影響が出る可能性があると危惧されています。
今回の法改正により、多くの労働者が社会保険に加入することで、制度の水準維持や持続可能性を高められます。
社会保険の適用拡大は、すでに2016年の法改正から実施されています。
当初、対象となる企業規模が従業員数501人以上の企業から始まり、2022年には従業員数101人以上の企業と、段階的に適用拡大が行われてきました。
2024年10月からは、新たに従業員数51人以上100人以下の企業が社会保険適用拡大の対象となります。
ここで言う従業員数とは、現在の「厚生年金保険の適用対象となる従業員」を指し、フルタイムの従業員に加えて過労働時間がフルタイムの3/4以上となる短時間労働者も含まれる点に注意が必要です。
「社会保険適用拡大」に向けて企業は厚生年金保険の「被保険者資格取得届」の届出が必要となります。
届出までに必要な社内準備を、4つのステップに分けてご紹介します。
まず、加入対象となる自社の従業員数を把握します。
新たに加入対象となるのは、以下の条件をすべて満たす短時間労働者です。
週の所定労働時間は契約上の時間であり、臨時に生じた残業時間は含みません。記載したほかにも、所定労働時間や賃金について細かな基準が定められています。
※詳しくは、厚生労働省の特設サイトの「社会保険適用拡大対象となる事業所・従業員について」を確認してください。
厚生労働省が提供している「社会保険料かんたんシミュレーター」で、社会保険料の試算ができます。基準を満たす従業員数と、企業が負担する社会保険料の総額を概算した上で、自社の対応方針を決定しましょう。
新たに加入対象となる従業員に、法改正について周知します。社内ネットワークやメールなどを使い、社内周知を行いましょう。
必要に応じて説明会や個人面談を行います。社会保険の加入対象者であることに加え、加入によって得られるメリットも伝えましょう。
面談を行うことで、今後の働き方について話し合うよい機会にもなり、労働時間の延長や正社員への転換など、キャリアアップにつながる提案もできます。対象者の抱える不安を払拭するためにも、丁寧なコミュニケーションは不可欠です。
対象となる企業は、2024年10月7日までに対象者全員分の書類を作成して提出します。届出はオンラインで行えます。余裕を持って準備に取り組みましょう。
説明の際には、メリットだけでなくデメリットを伝えることも大切です。社会保険の加入によるメリット・デメリットを説明した上で、従業員が納得して、自身の働き方に合った選択ができるようにしましょう。
従業員からよくある質問の一例をご紹介します。
説明会や個人面談時に答えられるよう、さまざまなケースを確認しておきましょう。
<週25時間勤務 配偶者扶養内パートのAさんのケース>
Q:手取りが減るなら加入したくないのですが……。
A:加入によって、将来受け取れる年金額が増額されます。年齢によって受け取れる、いわゆる老齢年金だけではなく、障害年金や遺族年金も同様です。また医療保険についても、病休や育休期間中に給与の2/3が支給されるというメリットがあります。
公的年金シミュレーターで保険料を確認し、メリットとデメリットを比較してみましょう。
<週20時間勤務 国民年金・国民健康保険に加入しているBさんのケース>
Q:加入すると、私の保険料や年金は増えますか?
A:ご自身で払っていた保険料が給与からの天引きになり、その保険料の半分は会社が負担する形になるため、むしろ保険料は減ることが多いです。
ただし給与によって保険料は異なるので、Bさんの場合どうなるか確かめてみましょう。
説明の際には、厚生労働省がネット上で提供している、従業員向けガイドラインを活用しましょう。図表や実例が載っているため、自分ごととして受け取りやすく、理解を促すのに役立ちます。
<参考サイト>
●「社会保険適用拡大ガイドブック」
●「〜あなたの年金が変わる〜大切なお知らせ」
●「従業員のみなさま 社会保険加入のメリットや手取りの額の変化について」
以上、10月の社会保険の適用拡大で企業がするべき対応についてお伝えしました。
適用対象となる企業は、10月の施行に向けて準備を進めましょう!